umauma-gohan diary

〜サンフランシスコの暮らしと日々のうまうまごはん日記〜

木彫十二支『おぐら屋』

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木彫十二支『おぐら屋』

1300年の歴史がある因幡地方最古の温泉・岩井温泉の一角に「おぐら屋」はあります。約200年前に木地師(きじし)の小椋佐兵衛さんが挽物(ひきもの)を製作したのが始まりですが、その流れをくむ小椋家八代目により、従来の挽物に独創的なデザインと技術を加えて木彫人形十二支が作られました。全体を挽物細工で作り、貝を砕いた胡粉を下地に塗って泥絵の具で着色します。作業はすべて手仕事で同じものは二つとしてありません。私が幼い頃から母が飾ってくれていたおぐら屋の木彫人形。小説家・尾崎翠さんの故郷である岩井温泉を訪れた時、旅館近くにこのおぐら屋さんがあることを知り、工房にお邪魔した時のことにふれたいと思います。

↓↓↓尾崎翠さんの故郷へ

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◎木彫十二支

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その時に購入したのが桐箱に入ったこの木彫十二支。九代目・小椋昌雄さんの作品です。私を迎えてくれたのは、現在、鳥取県伝統工芸士になられた奥さまの愛子さん。愛子さんと色んな話をしている中、この十二支の思い出話をしていたら「あなたの好きな人形を選んでいいですよ」と言って、絵付けされた十二支を全部出して選ばせてくださいました。さすが!人形好きは分かってらっしゃる!愛子さんは「私は今から夕飯を食べてくるから、終わったら呼んでください」と言って選ぶ時間を作ってくださいました。私は店先に一人座って、木彫を一つ一つ包み袋から出し、じっくり選ばせてもらいました。九代目はお亡くなりになりましたが、私が伺った時は工房で絵付けをされていました。その姿を横目で見ながら静かな時間が流れました。(注意 : 今は人形を選ぶことをお断りされているそうです)

◎寅の木彫

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選び終えて、愛子さんに声をかけたら、帰りがけに大きな寅の木彫をくださいました。「これ持って帰りなさい」って。私が鳥取出身で木彫人形愛を熱弁したものだから、親切にして下さったのだと思います。12年前の寅年のことです。今年は寅年なので大・小の寅を飾りましたよ。特にこの大きな寅を見ると12年前のおぐら屋さんの店先を思い出します😌

↓↓↓お正月に飾りました🐯

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◎傷んだ木彫

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渡米後、毎年お正月にはその年の人形を飾ります。大事に保管していたつもりですが、繊細なものなので湿気でカビがついたり、泥絵の具が割れたりして、卯と巳と辰が可愛そうな姿になってしまいました。2019年、日本に一時帰国した時にこの3体を持って帰り、おぐら屋さんに伺いました。木彫の状態を話したら「それは悪いことしたなぁ〜。わざわざ来てくれて悪かったなぁ〜。」とおぐら屋さんはまったく悪くないのにそう言って迎えくれました( ;∀;)💧

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お話好きの愛子さんと長い時間 話をしました。愛子さんは昔、小学校の先生をされていたようで当時の話を聞かせてくれました。小学校の先生だったからか、私の話に相槌を打つ時、子供に相槌を打つように「そーかー。そーかー。」と鳥取訛りの優しい口調で聞いてくださるので、私は子供にかえったような気持ちになり、とても居心地がよく、その相槌が大好きになり、私も家で真似して使ってます😆

おぐら屋さんの歴史

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すごいものを見せてもらいました。これは八代目の作品。顔やフォルムが今と違いますね。丸っこくてかわいい。

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↑柳屋さんの張子のお面(ネット引用)

今はなきお面作りの柳屋さんの張子のお面。貴重なものですが店先に普通に飾ってありました。張子のお面はひとつ作るのに1週間はかかると言われます。柳屋さんは2015年に看板を降ろされました。今はもう手に入りません。鳥取に帰る度、買うか迷って、急いで買うこともないだろうと思っていたら残念なことになってしまいました。#いいと思ったものは買うべし

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中央にある木彫の人形はゆかむり人形といいます。岩井温泉は「ゆかむり」という独特なお湯の浴び方をするそうで、このゆかむり人形はお湯をかむる動きをするのが珍しく、当時はたくさん売れたそうです。

湯かむり→頭に手ぬぐいを乗せて柄杓で湯をかむるという江戸時代から伝わる珍しい風習

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木彫りの人形は切手にもなりました。1934年、商工省(現在の経済産業省)の工芸展で入選され、その後「辰」と「卯」が記念切手の図案に選ばれました。1978年に皇太子妃・美智子様が娘の紀宮様へのお土産として購入されたことで全国に知られるようになったそうです。

無印良品の福缶

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無印良品からの依頼で、2019年の『福缶』におぐら屋さんの木彫が使われました。缶の蓋に乗っている亥がおぐら屋さんの木彫です。「(無印良品から)声をかけてもらうのは嬉しいけど、手仕事だから数作るのが追いつかない。」と言われてました。確かに確かに。九代目が亡くなられてから、愛子さんと息子さんとお嫁さんの三人で作られているそうです。代々受け継がれていますね。

◎柳屋さんの流し雛

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これは超貴重!柳屋さんが作られた流し雛です。今も鳥取では流し雛が数多く作られていますが、柳屋さんが顔に絵付けした雛人形はまず手に入らないと思います。「置きっぱなしにしてたから日に焼けてしまったけどよかったら持って帰りんさい。」と言って、ガラスケースに入った人形を譲って下さいました。人形の顔がとても繊細で上品。これは私の宝物です。

鳥取県伝統工芸士・10代目 小椋愛子さん

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この方が鳥取県伝統工芸士になられた10代目・小椋愛子さん。大きな包装紙を丁寧に切って、ひとつひとつ綺麗な包装をしてくださいました。さすが工芸士。

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私が新しく揃えた3体の木彫。干支が分かるように包装紙に一筆入れてくださいました。丁寧な仕事とといい、にじみでる優しさといい、私が感動で震えながら見ていることを愛子さんはご存知ないでしょうが、私は嬉しくて心で泣いてましたよーーー😭😭😭

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このハサミ。私のお婆ちゃんも同じようなハサミを使っていたので記念に撮らせてもらいました。愛子さんの話は何時間でも聞けるので長居してしまいました。

◎『鳥取が好きだ。』

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↑倉吉はこた人形のはーこさん

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イラストレーターで作家の安西水丸さんが出された『鳥取が好きだ。水丸の鳥取民芸案内』。生前に遺した未発表のエッセイ集です。安西水丸さんは東京の方ですが鳥取民藝を大変愛してらしたようです。鳥取の手仕事が詰まった本です。機会があれば是非。

↓↓↓うまうまの故郷のハナシ

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また新型コロナが流行ってきて、今度はいつ日本に帰れるかわかりませんが、また愛子さんに会いに行きたいと思います。あの「そーかー。そーかー。」の優しい相槌を聞きに。私も鳥取が大好きだーーー!!!

鳥取を愛するうま子

Photos by umauma

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