umauma-gohan diary

〜サンフランシスコの暮らしと日々のうまうまごはん日記〜

インドに魅せられた人

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インドに魅せられた人

ひよこ豆のカレーが妙に美味しくて、ある人のことを思い出しながら食べました。最近、その人のことをよく思い出します。私がハタチの頃に出会った人です。今日はその話をしたいと思います。

 

短大卒業間近だった私は就職活動というものを一切せず、卒業してもフラフラしていました。これについては書きたいことが山ほどあるのですが今回は端折ります……💦

 

大したバイト代も稼げず、まともに食べれずしていたら、ある先輩から連絡があり「大学から紹介されたバイトを何度かサボってしまい、示しがつかないから暇なら代わりに行ってくれ」と言われたので、代わりに東急ハンズエスカレーター脇に座って、登ってくる人をカチカチとカウントするバイトをやりました。なんだかんだでそのバイトは続き、関連会社の社長から暇ならコンピューターの打ち込みの仕事を手伝ってくれと言われ、そのバイトも引き受けました。「これからコンピューターの時代がくるから、自分の為にもキーボードに慣れておくといい」と言われて、見様見真似でカチカチやっていたことを思い出します。

 

その会社は当時としては斬新な「コンピューターグラフィックシステム」という小さな会社で、のちに上司となるイケメン三人の優秀なおじさま達にとても大事にしてもらったので、その会社に就職することにしました。(ってか、拾ってもらいました。笑)その会社が当時はなかったオリジナル名刺の事業を立ち上げ、オリジナル名刺に名入れをするという業務をはじめたので、私はその仕事を手伝うことになりました。その業務が順調に上向きになってきたので、今度は大きなギフトショーなどにも出店して、私はギフトショーで商品の紹介をする仕事も任されるようになりました。そこで大手ポストカードメーカーの店頭にも置いてもらえることになり、たまにですが販売業務の手伝いもするようになりました。

 

前置きが長くなりましたが、その販売業務を手伝っている時に知り合った少し年上の女性のことを思い出していたのです。彼女はそこでバイトをしていましたが、本業はOLだと言ってました。何故、本業があるのにバイトしてるんだろうと思っていたのですが、その時はそれに触れませんでした。

 

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なんだかんだで彼女と一緒になることが増え、そのうちプライベートな話もするようになりました。彼女はインドに行く旅費を稼ぐ為にバイトをしているのだと言いました。

「えっ?インド?」

当時の私はインドに憧れていました。学生時代は「カンテグランデ」というインドやスリランカの紅茶を扱うカフェでバイトをしていました。思いもよらず、傍にいる彼女からインドの話が聞けて、ググッと距離が近づいた感じがしました。

 

仕事が暇になると彼女の話に釘付けでした。彼女が何故インドに魅せられたか……肝心なところを忘れてしまいましたが、彼女はインドに行ってから、またインドに行きたいと思うようになり、いまは仕事とバイトの掛け持ちでインドに行くために働いていると言ってました。

 

お金が溜まったら、彼女はしばらくインドへ行き、帰ってきたら仕事とバイトに戻り、私に旅の話をしてくれました。それが楽しみで、楽しみで。そのうち彼女は本業の仕事を辞めました。長期の休みが取れなくなったからだと思います。仕事よりインドを取ったんだ。格好いいなぁと思いました。

 

そのうち彼女は断捨離を始めました。持っているものをすべて処分するので、よかったらもらってくれないか?と言われ、確か黒いビーズのバッグをもらった記憶があります。そして、ある日「なんにもなくなってスッキリした」と清々しい顔で言ったのです。

 

彼女は旅の写真もよく見せてくれました。でもある日、写真は機械を通した世界だから、自分の目でみた景色を絵で描きたいと言って、絵を習い始めました。私は頭の中で、なんにもない部屋で黙々と絵を描く彼女の姿を想像しながら、その話を興味深く聞きました。

 

OL時代の彼女は、正直、自信がなさげに見えました。細くて小さな体がそう見えたのかもしれませんが、絵を描くようになった彼女は自信のある明るい顔つきになっていったのです。

 

彼女はいつも一人でインドへ行ってました。現地の水や食べ物でお腹を壊したことはなく、危険な目にもあったことがなく、ある時、バスに乗って移動していると横に座った人と話が弾み「よかったら家に来てください」と言われたそうです。その人は、自分の家は裕福だと言うのでお邪魔したら、ボロボロの家に大家族で住んでいたそうです。「インド人は嘘つきだ!」と言ってました。(笑)ただ、そのお家は細密画を描く家系のお家で、その人やその人の兄弟が細密画を描いている姿に魅せられ、絵をはじめるきっかけになったと言ってました。そんなに縁が深いなら「インドに住まないのですか?」と聞くと「インドは行き来するのがいい」と。「インド人と結婚しないんですか?」とバカみたいな質問をすると「それはない」と断言されました。(笑)

 

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ある日、ちょうどインドから帰ってきた彼女が「本場のインドカレーが食べれる店を見つけたので食べに行きませんか?」と誘ってくれました。彼女といった先は大阪の丸ビル。当時の丸ビルは、最先端のファッションブランドや高級レストラン、「マハラジャ」というディスコが入っていたビルで、そのイケイケビルにウブな私は恐怖さえ感じました。ましてや、食べたことがない異国のカレーって……しかも本場の味って……ドキドキの連続でした。

 

彼女とテーブルに座り、まったく分からないメニューを目で追っていたら、彼女が「ここのひよこ豆のカレーとほうれん草のカレーが本場の味なんですよ。頼んでいいですか?」と言われ、私は生まれてはじめてのインドカレーを食べることになりました。

 

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まずはほうれん草のカレーと巨大なナンがきました。コレハ、イッタイナニ?最初から巨大なナンに衝撃を受けました。ほうれん草のカレーは初心者の私でも感動するほど美味しかったことを覚えています。中に入っているゴロゴロした白い固形物には馴染めず、これは何ですか?と聞くとチーズでした。自分の知りうるチーズの味はせず、あんまり美味しくないなーと思いました。

次に運ばれてきたのは真っ黄色のカレーでした。すると彼女の顔がぱぁーっと明るくなったのです。彼女はこれこそがまさしく本場の味で、これが食べたかったと興奮気味に言い、自分のお皿に取ったかと思うと右手でガシガシ食べはじめたのです。スプーンが進まない私をみて「これ全部食べてもいいですか?」と。もちろん、もちろん、全部食べてください、といわんばかりの顔をしていたと思います。彼女は右手を使って手慣れた手つきで食べていました。それにも衝撃が走ったのですが、その時、インドでは左手が不浄の手ということを教えてもらいました。食べ終わると彼女はすべてご馳走してくれたと思います。何故覚えているかというと、メニューをみて、ひとつのカレーが1000〜1500円もするなんて、ハタチの私は驚きと不安でドキマギした記憶があるからです。

 

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21歳になりました。私はやっと自分のやりたい仕事が見つかり、お世話になった会社を辞めることになりました。辞めることを彼女に話し、辞めてからもお付き合いは続いたのですが、いよいよ新しい仕事が忙しくなり、帰宅が深夜を越える毎日でした。休みもありません。でも充実した毎日でした。早く一人前になりたくて、目の前のことでいっぱいいっぱいでした。そこから記憶が曖昧ですが、電話を最後にそれっきりになってしまったと思います。

 

先日、主人とひよこ豆のカレーを食べながら、そんな思い出バナシをしていたら、すごく彼女に会いたくなりました。また一緒にひよこ豆のカレーが食べたい。いまなら喜んでひよこ豆のカレーを食べると思います。(笑)もし会えたなら、楽しい話ができそうだし、また旅の話を聞かせてもらいたい。

 

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彼女が一冊の本をくれました。横尾忠則氏の「インドへ」。大変面白いで夢中になって読みました。その中の三島由紀夫氏と横尾忠則氏の電話のやり取りが印象的です。

 

「三島さん、いつになったら僕もインドへ行けるのでしょうか?」

「横尾くん、インドから呼ばれる日がきた時だよ」

 

インドから呼ばれる日が来たら、私もインドに行けるかもしれない。そう思ってました。すでに行き来している彼女は、インドから呼ばれた選ばれし人だと尊敬もしていました。えっ?今の私ですか? 今呼ばれても行かないと思います……インドも私を呼ばないでしょうけど。(笑)

 

人間同士も同じで、会いたいという念を飛ばせば、相手はキャッチしてくれるのでしょうか? 呼んだら会えるのでしょうか? もしそうなら、また彼女に会いたい。元気でいて欲しいです。

 

人間は不思議なパワーを持っていると思います。忘れていたことをふとしたきっかけで思い出し、大概は忘れてしまうのですが、頭から離れないのは意味がありそうです。ハタチの頃のウブな時代も鮮明に思い出しました。……もしかしたら、初心にもどれというサインかもしれませんね。

 

もし会える日がきたら、このブログに書き記したいと思います。「探偵ナイトスクープ」に応募して採用されたら、すぐ足取りがつかめそうですがそれはやめておきます。(笑)

 

長々と失礼しました。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

 

テレパシーを飛ばすウマ子

 

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